今回の経済危機緊急対策の中心をなすものは金融緊急処置令、日銀券預入令、臨時財産調査令の三勅令及び各施行規則に規定された一連の通貨金融非常処置、ならびに戦後物価対策基本要綱に盛られた米、石炭を基準とする新物価体系の確立による物価安定策である。
これらの諸規定による仕組みは、まづ金融緊急処置令によって17日以後
既存預金等は一切封鎖する。
この預金封鎖は世帯主三百円、世帯員一人百円を限って毎月支払はれることにする。
次に新様式紙幣(現在流通紙幣と同価)を発行して現在流通中の十円、二十円、百円、二百円、千円の各日銀券(旧券)と交換せしめる。
その交換期間は二月二十五日から三月七日まで、交換限度は一人當り百円とし、残金は全部金融機関に封鎖して既存預金の封鎖と同様の取扱ひをする。
また旧券は三月七日まで交換又は預入はできるが、強制通用は三月二日を
もって効力を失うことにする。
これとともに臨時財産調査令により三日午前零時現在における個人、法人の財産を申告せしめ、将来における財産概算納入の基礎とするものである。
《朝日新聞 昭和21年2月17日記事》
敗戦から半年が過ぎた、昭和21年2月17日(銀行休業日である日曜日)、全国一斉に「預金封鎖」が告知された。
国家自らが経済危機と認識した時には、恐ろしい処置がとられるものです。
まさに、「お金(紙幣)は幻想だ」という真実を知らしめる瞬間です。
それにしても、国民に有無を言わせない迫力を感じます。
また預金封鎖と同時に新円切替を実施し、旧紙幣を無効とすることで、タンス預金を含む全ての財産炙り出しに成功している。
赤紙一枚で徴用された当時と環境が大きく異なるため、将来預金封鎖を決断するには、政府転覆、政治家失職の覚悟が必要でしょうから、安易にやるとは思えません。
しかし、既に研究は始まっていると聞きますので、実施されれば打ち漏らしのないきめ細かな網目となるでしょう。
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