＜外国為替取引の基礎知識＞　　

　　　　　　　　　「図解雑学　通貨と経済」　野村重治　著

●IMF体制における流動性のジレンマ
　
　　　　IMF体制は、アメリカ経済が好調な1950年代までは
　　うまく機能していましたが、システムの根本に存在していた
　　矛盾によって亀裂が入ることになります。

　　　　IMF体制の下では、ドルが国際通貨として流動性を保つ
　　ために、アメリカの国際収支が赤字にならなければ
　　なりませんでした。
　　　　つまり、世界経済の拡大のためドルを発行し続けると、
　　アメリカの国際収支が赤字になり、、ドルの信用を落とし
　　続けるという流動性のジレンマが内包されていたわけです。

　　　　また、アメリカでは1960年代にベトナム戦争や対外軍事費
　　の強化などを行った結果、国際収支の赤字が拡大して
　　金の保有準備高が減少し、各国の中央銀行からの交換要請
　　に応じられなくなりつつありました。
　　　　結局、当時の大統領であったニクソンは、1971年にドルと
　　金との交換停止を宣言します。
　　　　この事態を日本ではニクソンショックと呼んでいます。



●ニクソンショック後の国際通貨体制

　　　　ニクソンショック後、1971年10月から1973年2月までは、
　　変動幅を拡大した固定レートを設定しました。
　　　　これをスミソニアン体制といいます。

　　　　ドルは、1ドル＝35オンスから38オンスへと切り下げられ、
　　日本の円は、1ドル=308円で変動幅は上下2.25%に設定
　　されました。
　　　　しかし、アメリカの国際収支悪化は止まらず、このレート
　　においても市場の混乱を収めることが出来ませんでした。

　　　　スミソニアン体制は長くは続かず、主要国は変動相場制
　　に移行することになります。
　　　　変動相場制は、1976年にジャマイカのキングストンで
　　開かれたIMFの暫定委員会で正式に承認され
　　（キングストン合意）、ここで金の廃貨も決定されました。
　　　　これが、現在まで続く変動相場制の始まりです。