「初心者のためのやさしい金融」 塚崎公義・山澤光太郎 著 企業の会計は企業会計原則という規則に従って行われますが、企業の 支払う法人税は税法の定める計算方法に基づいて計算されます。 企業会計原則と税法では、収益や費用として考える範囲に微妙な差が 有りますから、企業が考える利益に税率をかけても法人税の額に一致しない 場合が少なくありません。 これまでは、企業会計原則に従って税引き前利益を計算し、そこから実際に 支払った税額を差し引いて当期純利益を求めていましたが、これでは企業が 考える「正直な企業の実態」を正確に反映した決算とはなりません。 そこで、企業が本来支払うべきだと考える税額を自分で計算し、これを 差し引いたものを当期純利益にしようということになりました。 こうした処理は、「税効果会計」と呼ばれています。 もちろん、企業と税務署の考え方の違いが全て「税務署への貸し」になる わけではなく、一部について認められるようになっただけなのですが、銀行の 不良債権処理についての税効果会計が巨額に上がっているため、注目され ています。 銀行は、貸出債権のうちで将来回収不能と見込まれる金額について、 貸し倒れ引当金を計上します。 これにより企業会計上は利益が減り、銀行が考える「納めるべき税金」も 減ります。 しかし、こうした引当金の中には税法上の損金として認定されないものも 含まれています。 このような場合、損金として認定された場合と較べて今期の税額が大きく、 来期以降の税額が小さくなりますから、その差を税務署への貸しと考えて、 「繰り延べ税金資産」という資産を計上します。 しかしながら、税務署が税金で返してくれるわけではなく、「来年黒字でも 税金を取らない」というだけの話なので、こうしたものを資産に計上しておくことに 対して、銀行の健全性上問題があるという見方をする人もいます。 |
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