「初心者のためのやさしい金融」
塚崎公義・山澤光太郎 著
銀行の貸し出しにより新たな預金が生み出され、それを元に別の貸し出しが行われるといったプロセスを通じて、当初の資金供給量を上回る預金が創造 されることを「信用創造」と呼ぶ。
当初の資金供給量と最終的な信用創造の比率を信用乗数と呼ぶ。
日銀がA銀行に1億円を供給したとしましょう。
A銀行はこれをB社への与信に用い、B社はこれをC社への支払いに使い、C社はこれをD銀行に預金したとします。
D銀行がこれを貸し出しに用い、借り手がこれを支払いに用い、受取人がこれを、別の銀行に預金し・・・・と続けば、世の中全体としての預金は当初の資金供給量を大幅に上回って増加していきます。
こうしたプロセスを「信用創造」といいます。
もっとも、信用の創造は無限に行われるわけではありません。
A銀行の貸し出しが1億円ならば、B社の預金も1億円でしょうが、D銀行の貸し出しは1億円よりも少ないからです。
これは、「銀行は受け入れた預金の一定割合を(預金準備率)準備預金として日銀に預けるべし」という規則があるからです。
結局、当初に供給された1億円が全て準備預金として日銀に預けられた段階で信用創造は止まります。
預金準備率を10%とすると、生み出された預金の10%が1億円ということから逆算して、10億円の預金が生み出されたことになります。
生み出された預金の額を当初の資金供給量で割った値を「信用乗数」と呼びます。
信用乗数は預金準備率が小さいほど大きくなります。
(厳密には、1÷預金準備率となります)
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