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「外資ファンド利回り20%のからくり」 北村 慶 著より
■「投資ファンド」の理論的支柱〜「無裁定価格理論」
これらの例からも分かるように、金融商品に関する「理論価格」が分かれば、その商品の割高・割安が分かり、取るべき投資行動-- 即ち、「売り」か「買い」か-- が適格に判断できることになる。
・・・中略・・・
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このように、「理論価格の推定」、その精度こそが、「投資ファンド」とファンドマネジャーにとっての利益の源泉なのである。
その手法は千差万別であり、それぞれがかなり複雑であることから、本書では、彼ら「投資ファンド」が拠り所としている基本的考え方について簡単にふれるだけに留めておく。
それが「無裁定価格理論」である。
この考え方は、「利回り20%超」を実現するための理論的支柱の一つとなっている。
「無裁定価格理論」とは、
「どんな商品でも市場価格はいずれ
理論価格と等しくなる」
という理論である。
この二つの価格に差が無い状態を無裁定状態、差がある状態を裁定状態、という。
この理論に従えば、無裁定状態にある世界では、「すべての金融商品について、リスク分を勘案し調整した後の収益率は、同じになる」ことになる。
つまり、 完全な世界を想定すれば、預金、国債、株式、不動産など、どの商品を買っても、利回りが高い商品には、それ相応の高いリスクがあり、利回りが低い商品のリスクは小さいという理論 である。
なんだか当たり前のようだが、これが金融工学の基礎となる考え方なのだ。
・・・中略・・・
つまり、約束したリターンが100%確実に得られ、収益がブレない投資は、国債への投資ということになる。
言い直すと「無裁定状態にある世界では、全ての金融商品について、リスク分を勘案し調整した後の収益率は、国債の利回りと同じになる」 ということになる。
これを式で表すと、
リスクのある商品のリターン= 国債の利回り
+リスクに見合ったリターン割り増し分
という等式が成り立つことになる。
この式は大変重要な式である。
これから、「同等のリスク商品であれば、同じリターンが得られるはずだ」というロジックが導き出せるからである。
リターンとリスクが同じであれば、価格も同じで有るはずだ---ということは、商品のリスクを何らかの形で計測し比較できれば、それらの「理論価格」が計算できることになる。
「理論価格」の算出に日々頭を悩ましているファンドマネジャーたちは、こうした考え方を用いて、すでにリスクと価格が分かっている他の商品から、「理論価格」の推定を行っているのである。
運用には、先物や、オプションなどのさまざまな金融デリバティブ(金融派生商品)が用いられるが、これら運用に欠かせない金融商品の価格も、こうした考え方から無裁定状態を仮定することで、導き出されている。
そして、ノーベル経済学賞を受賞した有名な
「ブラック・ショールズのオプション価格理論」
もこうして生まれたのだ。
「利回り20%超」の第一の秘密である。
投資に関する判断は、本来、「将来のリターンとリスク」についてなされるべきものであるが、「実際には、リターンもリスクも過去のデータから推定するしか方法がない」。
国や市場の世界経済における位置付けなど、リターンを発生させる基本的な環境がドラスティックに変化してしまえば、過去のデータをベースに分析した結果に疑義が生じる点を忘れてはならない。
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